月別アーカイブ: 2016年8月
秋の全国交通安全運動
厳しい残暑が続いていますが、残り1ヶ月ほどで秋の全国交通安全運動が始まります。公益社団法人全日本トラック協会はこのたび、9月21日(水)から同月30日(金)までの期間中「子供と高齢者の交通事故防止」を始め、「夕暮れ時と夜間の歩行中・自転車乗用中の交通事故防止(特に、反射材用品等の着用の推進及び自転車前照灯の点灯の徹底)」、「後部座席を含めた全ての座席のシートベルトとチャイルドシートの正しい着用の徹底」及び「飲酒運転の根絶」を基盤にし、さらに事業用トラック向けの交通安全に積極的に取り組む方針を発表しました。そこで、ここで再度、安全運行の確保をするために、トラック運送事業者や運行管理者ができる安全対策をおさらいしたいと思います。
追突事故の防止
過去エントリー「【トラック追突事故】特徴と要因」をご参照いただいた方にはお分かりの通り、事業用トラックにおける事故の半数は追突事故が占めています。国土交通省が制作した「トラック追突事故防止マニュアル」や全日本トラック協会が制作した「トラック追突事故防止マニュアル~追突事故撲滅キット~」などを活用して、事業主や運行管理者が積極的に注意喚起をしましょう。
交差点事故の防止
全日本トラック協会が制作した「トラック交差点事故防止マニュアル~交差点事故撲滅キット~」を活用し、よりいっそう丁寧にドライバーを教育してください。また、運転中には横断歩道の手前では最徐行、または一時停止をすることで左右をバランスよく安全確認することや、交差点を左折する時に自転車やバイクの巻き込みを防ぐため、また右折する時は横断歩道の歩行者との事故を防ぐために念入りな安全確認を喚起しましょう。
子供と高齢者の交通事故防止
子供や高齢者のそばを通過する際には、十分に速度を落とすなど思いやりのある運転を心がけるよう啓蒙しましょう。
夕暮れ時と夜間の歩行者や自転車乗用者の交通事故防止
夕暮れ時と夜間における歩行者や自転車乗用者の交通事故を防止するために、前照灯の早めの点灯と、昼間よりも控えめの速度で運転することを喚起しましょう。
シートベルトの正しい着用
ドライバーを含むすべての乗務員に対し、シートベルトの正しい着用を徹底させてください。
飲酒運転の根絶
酒気帯び運転、飲酒運転の根絶を徹底するため、ドライバーに対する適切な指導と監督を行うとともに、アルコール検知器を使用した厳正な点呼を徹底してください。
トレーラー事故の防止
全日本トラック協会が制作した「トレーラハンドブック」や「鉄鋼輸送に携わるプロ運転者・管理者用ガイドブック」などを活用し、海上コンテナの固定方法や鋼材の固縛方法を再確認し、横転や荷崩れなどのトレーラ事故の防止を心がけましょう。
高速道路における事故の防止
以前もお話しした通り、高速道路における事故は高速道路に入り1時間以内に多く発生しています。高速道路に入った後は可能な限り早い段階で休憩をとらせるなど、高速道路における事故防止を徹底してください。
健康起因事故の防止
点呼時や日常的なコミュニケーションでドライバーの健康状態の確認を徹底し、体調の急変に伴う事故の防止を図ります。
過労運転の防止
事業者は、ドライバーの休憩や睡眠のための時間、休息のための時間が十分に確保されるように、勤務時間と乗務時間を定めることが大切です。運行管理者に対しては、運行経路、運行時間、休憩地点などを含む適切な運行指示書の作成や、運行計画と乗務割の作成を行い、点呼時などにドライバーの健康状態の確認を丁寧にするよう指示し、過労運転の防止に努めてください。
危険ドラッグの根絶
危険ドラッグを使用して運転したり、危険ドラッグの使用が原因で事故を起こすことを根絶するために、車内安全教育や点呼時などに、危険ドラッグの使用による運転の悪質性や危険性をドライバーが十分に理解できるよう、意識の啓蒙を行います。
安全な車両の確保
運行に関わるすべての人が、定期的な自動車の点検や整備を定期的、日常的に行い、不正改造車を排除するよう積極的に呼び掛けましょう。
引用参考「平成28年秋の全国交通安全運動 公益社団法人全日本トラック協会実施計画」
災害の発生を未然に防止するための重要ポイント9
最近、ゲリラ豪雨が多く発生しています。大雨や雷の被害は、多くの人的被害や住宅被害につながります。ゲリラ豪雨は毎年、7月から9月にかけて多発しますが、9月の予想発生回数は昨年と比べて130%が予想されています。台風やゲリラ豪雨は、河川の急な増水やはん濫、崖崩れ、土石流、地滑り、高潮、竜巻などが起こる可能性があり、早期に避難のための避難体制を整えたり、早期避難の意識を高く持つことが必要とされます。ライフラインを担う運送業界において、自然災害に対する危機の意識はとても重要です。直接運送とは関係ないようにも思えますが、災害が起こった時に物資を供給するのは運送の使命です。
そこで、中央防災会議会長よりトラック協会に通知された、人命保護を第一とした防災態勢の強化を促すガイドラインをお知らせいたします。
1. 危険箇所などの巡視、点検の徹底
河川などのはん濫や崖崩れ、土石流などの災害が発生するおそれのある危険箇所を改めて見回り、点検をしてください。地形や地質、土地の利用状況、更には災害の履歴があるかどうかや最近の降雨状況を確認し、今までは危険性を把握していなかった区域も併せて再度安全性を点検しましょう。
2. 河川管理施設を始めとする施設管理などの強化
施設管理者は、災害の発生に備えて管理施設などの点検や、必要な箇所を補修するとともに、施設の操作人員の配置計画、連絡体制、操作の規則の確認をするなど、管理を強化してください。また、台風の接近などの火災発生の恐れのの場合には、事前に改めて施設の点検や修繕を行いましょう。
3. 災害発生の恐れがある箇所の周知徹底
浸水想定区域(洪水、内水、豪雨、高潮、津波)や、津波災害警戒区域、土砂災害警戒区域、土砂災害危険区域を始めとする災害発生のおそれのある箇所など、事業所などが把握している情報を、人々が災害から身を守るために、市町村へ提供しましょう。例えば、激しい雨が継続し避難所まで移動することがかえって命に危険を及ぼしかねない場合は、近くのより安全な場所や建物へ移動してください。それさえ危険な場合は屋内上階の山からできるだけ離れた部屋などへ避難し、安全を確保する必要があります。特に地震の被害を受けた地域においては、雨による土砂災害が発生しやすいので気をつけましょう。
4. 早い段階からの確実な防災情報の収集、伝達
降雨時の気象情報、気象等特別警報、洪水予報、土砂災害警戒情報、土砂災害警戒情報及び大雨警報・注意報を補足する情報(土砂災害警戒判定メッシュ情報)、竜巻注意情報、台風情報などの防災気象情報の収集、伝達を徹底し、関係者間での危機意識を共有しましょう。ホームページ、SNSなどインターネット上の情報については、必要に応じて適切に災害対応に活用しましょう。しかし、避難勧告の発令前であっても突発的に災害が発生する場合もあり、人々の自主的な非難を要する場合があることも心に留めておきましょう。
5. 関係機関から市町村に対する助言
市町村から助言を求められた際には、適切に必要な助言を行うことができるように事前に準備をしておくことが必要です。災害起こる前の段階でも防災情報の発表や伝達を的確、円滑に行うために、時間軸に沿った防災行動の計画を事前に準備し、市町村との連携を強化してください。
6. 地下空間の浸水対策の強化
地下空間の浸水の危険性について、地下空間の管理者と連携をとりながら利用者に対して事前に知らせるとともに、浸水対策と非難時の誘導などの安全体制の強化に努めましょう。もしも洪水が発生した場合、もしくは洪水が発生する恐れがある場合は、迅速かつ的確な情報の伝達をし、利用者の非難を行います。
7. 水辺の利用者に対する情報提供および啓発
大雨の後の河川増水時には、河川利用者と連携を取りながら河川など水辺の利用者に対して情報を提供し、安全な場所へ非難するように注意を促します。増水時や台風、ゲリラ豪雨の際、農業用水路、排水溝、岸壁などから落ちる危険性もあり、これらに近づかないよう注意を促すことも含めて、水難事故防止について利用者自身が助かる意識を高く持つことを啓発しましょう。
8. 災害対策本部の機能を維持
災害時において災害対策本部の機能を維持し、ある一定の業務を平常時と同じように行えるように業務継続計画を確認し、また必要に応じて適宜修正しましょう。
9. 非常用電源の確保
災害発生時に備え非常用電源を用意し、定期的に点検を行い浸水に備えた対策を取りましょう。
いかがでしたか? 直接的に運送とは関係ないように思われても、事故発生の防止はこのような災害時における意識の持ちかたも関わります。雨の多い季節です。常に災害には注意を払って運送を行いましょう。
引用参考 「梅雨期及び台風期における防災態勢の強化について」
【トラック追突事故】防止するための対策-その2
前回は、ドライバーができる3つの安全行動をご紹介いたしましたが、今回は、管理者、事業者ができる対策についてお話しいたします。
管理者ができる安全行動-その1 ドライバーの心身に負担をかけない運行管理をする
トラック運転者の労働時間等の改善基準を元に拘束時間、休息時間を考慮し、予定外でも休憩が取れるような余裕のある運行計画を作成しましょう。もしも遅延が発生したり、ドライバーの急な体調異常が起こったりして運行計画に変更が生じる場合は、荷主へ連絡するなどの必要な措置をとるとともに、ドライバーが焦ることの無いよう配慮します。ドライバーとの信頼関係の構築も大切です。点呼時にドライバーの健康を気にかけたり、日常的にコミュニケーションを取るようにしましょう。
管理者ができる安全行動-その2 具体的な安全指導とその実践度合いのチェック
日常的に、ドライバーが理解しやすいように具体的な指導をし、実施するないようと合わせてなぜそれを実施するのか理由もきちんと説明します。実施の状況を把握できるように、指導内容は、例えば「一般道では車間秒を3秒間確保する」など、できる限り明確な数値を引き合いに出して具体的なものにしましょう。指導するだけではなく、ドライバーがどのくらい理解しているか、指導内容が伝わっているかを確認するため、面談や研修後に感想を記載させたり、後日口頭で確認を行ってください。
確認は1度だけではなく、面談、構内巡回、登場指導などのあらゆる機会を利用して指導内容が実践されているかチェックしてください。日頃から、積極的に交通障害などによる追突事故の危険性を伝え、さらに点呼時には、ドライバーに交通障害に関する情報を伝えましょう。このような指導やチェックの結果は、事業者へ報告することを心がけてください。
事業者が作る安全体制
朝礼を行ったり、安全管理の注意喚起ポスターを掲示したり、事業所を訪問したりした時などのあらゆる機会を通じて、管理者やドライバーと密にコミュニケーションを取り、安全最優先、法令徹底遵守、継続的な改善の原則を浸透させ、安全風土の確立に努めましょう。また、管理者間の安全に関するコミュニケーションを促すために安全衛生会議などを開き、ディスカッションを行ったり、管理者向けのスキルアップ研修を行い、安全に対する意識を高めあうことも大切です。
追突事故を防止するための衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全技術を十分に理解し、それらを過信しすぎることの無いように活用しましょう。ドライブレコーダーは、事故時の記録のみにとどまらず、車間距離の取り方や発車や停止時などの運転の癖を確認したりと、日常の安全指導に活用することをお勧めします。
日々の安全指導や確認とは別に、自社の安全に対する取り組みを四半期ごとに振り返り、必要に応じて施策を追加したり、内容を変更したりして定期的な改善を心がけてください。
最後に
運送に関わる全ての人、ドライバー、管理者、事業者が安全の意識を高めあうことによって、起こりうる追突事故を多数減らすことができます。毎日の輸送をより安全なものにするために、定期的な注意喚起を怠らないよう、努めましょう。
引用参考 「トラック追突事故防止マニュアル~追突事故撲滅キット~」