トラックのディーゼルエンジンの環境負荷低減技術

E-FUELの画像

はじめに

トラック輸送は、日本の物流の大部分を担っており、その動力源としてディーゼルエンジンが主流となっています。しかし、ディーゼルエンジンは窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)を排出するため、環境負荷の低減が求められています。

特に、日本の「ポスト新長期規制(平成28年規制)」や欧州の「Euro 6」など、排出ガス規制が強化される中、ディーゼルエンジンのクリーン化が急務となっています。本記事では、ディーゼルエンジンの環境負荷を低減する最新技術や代替燃料の活用について詳しく解説します。

ディーゼルエンジンの環境規制の変遷

ディーゼルエンジンの排出ガス規制は、年々厳しくなっています。

例えば、日本の「平成28年規制」では、NOxは0.4g/kWh、PMは0.01g/kWh以下とされ、2000年以前の基準と比較すると90%以上の削減が求められています。

このような規制をクリアするため、エンジンメーカーは排ガス後処理技術や燃焼効率の向上に取り組んでおり、クリーンディーゼル技術が進化しています。

ディーゼルエンジンの環境負荷低減技術

ディーゼル微粒子除去装置(DPF: Diesel Particulate Filter)

DPFは、排気ガス中のPM(粒子状物質)を捕集し、燃焼させて除去するシステムです。

この技術により、排出されるPMを大幅に低減できますが、フィルターの目詰まりによる燃費悪化が課題とされてきました。近年では自動再生機能を備えたDPFが登場し、メンテナンス負担の軽減が図られています。

尿素SCRシステム(Selective Catalytic Reduction)

SCRは、尿素水(AdBlue)を排気ガス中に噴射し、NOxを無害な窒素と水に分解する技術です。

このシステムを活用することで、NOxの排出量を大幅に削減できるため、現在のディーゼルエンジンには必須の技術となっています。ただし、AdBlueの補充が必要であり、寒冷地では凍結のリスクがあるため加温装置が搭載されています。

高効率燃焼技術

エンジンの燃焼効率を高めることで、燃料の無駄を削減し、CO2やNOxの排出を抑えることができます。

特に、以下の技術が活用されています。

高圧縮比エンジン:燃焼効率を向上させ、燃料消費量を削減
可変ジオメトリーターボ(VGT):エンジン回転数に応じた最適な過給圧を提供し、燃焼効率を改善
クリーンディーゼル技術:燃料噴射の最適化により、PMやNOxの発生を抑制

代替燃料の活用

▶︎  バイオディーゼル燃料(BDF: Biodiesel Fuel)

バイオディーゼル燃料は、植物油や動物性脂肪を原料とする再生可能エネルギーで、カーボンニュートラルの概念に基づく燃料として注目されています。

現在、多くの国でB5(5%バイオ燃料混合)、B20(20%混合)などのディーゼル燃料が導入されており、化石燃料の消費削減が進められています。

▶︎ HVO(Hydrotreated Vegetable Oil:水素化植物油)

HVOは、植物油を水素化処理した燃料で、通常のディーゼル燃料と比べてCO2排出量を大幅に削減できるという特徴があります。

▶︎ 合成燃料(e-fuel)

e-fuelは、再生可能エネルギーを活用して水素とCO2から合成される燃料で、カーボンニュートラルな燃料として期待されています。

車両運用の工夫による環境負荷低減

エコドライブの推進


◇急発進・急加速を避ける
◇最適なエンジン回転数で走行する
◇アイドリングストップを徹底する
を徹底することで、より環境負荷の低い運行が可能となります。

ルート最適化

最新の運行管理システム(TMS: Transportation Management System)を活用し、最適な配送ルートを計画することで、無駄な燃料消費を削減できます。

まとめ

ディーゼルエンジンの環境負荷低減は、排ガス処理技術の進化・代替燃料の活用・運行管理の工夫という3つの視点から進められています。

現在のトラック業界では、DPFやSCRを活用したクリーンディーゼル技術が標準装備され、さらにはバイオディーゼルやHVO、e-fuelといった代替燃料の導入が進められています。

今後、物流業界はより持続可能な輸送を目指し、環境負荷の少ない運行方法を取り入れていくことが求められるでしょう。
岩瀬運輸機工も環境負荷に配慮した運搬を心がけて、持続可能な輸送を目指しています。

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参考文献

[平成28年排出ガス規制]

https://www.mlit.go.jp/common/001094623.pdf

自動車用高性能・高信頼性 VG ターボ チャージャの開発

https://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/433/433031.pdf

各国・地域におけるバイオ燃料の導入状況

https://www.pecj.or.jp/wp-content/uploads/2024/04/JPECForum_2024_program_010.pdf

バイオ・低炭素合成燃料という選択肢 ―バイオ・低炭素合成燃料がエネルギートランジションに果たす役割―|JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト

https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009992/1010151.html

HVO〈Hydrotreated Vegetable Oils〉 – 一般財団法人環境優良車普及機構

https://www.levo.or.jp/research/tyousa/research-tyousa-4/word-h2/

持続可能な物流へ 〜CNGトラックの利点と導入のポイント〜

圧縮天然ガス

はじめに

環境問題への関心が高まる中、トラック業界でもクリーンエネルギーの活用が進んでいます。
その中でも、CNG(圧縮天然ガス)トラックは、ディーゼルエンジンと比較してCO2排出量が少なく、排気ガスがクリーンであることから注目されています。
今回は、CNGトラックの特長やメリット、導入時のポイントについて解説します。

LPGタクシーの普及とCNGとの違い

ガスを使った自動車は日本ではタクシーを中心に普及しています。
LPG(Liquefied Petroleum Gas:液化石油ガス)は、プロパンやブタンを主成分とする燃料で、主にタクシーや一部の商用車に利用されています。一方、CNG(圧縮天然ガス)はメタンを主成分とする燃料で、トラックやバスなどの大型車両に適しています。

【LPGとCNGの主な違い】

成分: LPGはプロパン・ブタン、CNGはメタンが主成分。
貯蔵方法: LPGは液体として低圧で貯蔵されますが、CNGは気体のまま高圧で貯蔵されます。
供給インフラ: LPGは全国に供給網が整備されているが、CNGはインフラ整備が途上です。

タクシーがガソリンではなくLPGを使うメリットは以下の3点です。

01. 環境性能の向上

CO2排出量がガソリン車よりも少なく、温暖化対策に貢献します。
さらに、NOxやPM(粒子状物質)の排出が少なく、大気汚染防止に寄与すると考えられます。

02. 燃料コストの削減

LPGはガソリンより価格が安定しており、ランニングコストを抑えられます。
また税制優遇措置が適用されることが多く、経済的なメリットが期待できます。

03. エンジンの耐久性向上

LPGは燃焼時のカーボン堆積が少なく、エンジンの寿命を延ばす効果があるとされています。
そのため、メンテナンスコストの削減にもつながります。

CNGトラックとは?

CNGトラックとは、圧縮天然ガス(Compressed Natural Gas)を燃料とするトラックのことです。
天然ガスを約200~250気圧に圧縮し、燃料タンクに貯蔵することで、ディーゼルやガソリン車と同様に長距離走行が可能になります。

CNGトラックのメリット

▶︎ 環境負荷の低減


CO2排出量がディーゼル車に比べて約20~30%削減します。
NOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)の排出が大幅に減少し、大気汚染の防止に貢献すると考えられます。

▶︎ 燃料コストの削減


天然ガスは石油に比べて価格が安定しており、燃料費の変動リスクを抑えられます。
一部の自治体ではCNGトラック導入に補助金制度が適用されることもあります。

▶︎ 静粛性の向上


ディーゼルエンジンに比べ、燃焼音や振動が少なく、ドライバーの負担を軽減します。

CNGトラック導入時のポイント

▶︎ 燃料補給インフラの確認


CNGスタンドはまだ全国的に普及途上のため、運行ルート上に補給設備があるか事前に確認が必要となります。

▶︎ 導入コストの検討


CNGトラックの車両価格はディーゼル車よりも高めですが、長期的な燃料コストや補助金を考慮するとメリットが大きいと考えられます。

▶︎ 運用ノウハウの習得


CNGの特性や燃料補給方法について、ドライバーや整備士への教育も必要となります。

まとめ

CNGトラックは、環境負荷の低減や燃料コスト削減といったメリットを持ち、持続可能な物流の実現に向けて有力な選択肢となります。
導入にはインフラやコスト面での課題もありますが、今後の技術革新やインフラ整備の進展により、さらなる普及が期待されます。

岩瀬運輸機工でも、環境に配慮した輸送手段の導入を積極的に検討していきます。

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