事業用トラックの人身事故のうち、追突事故は半数以上を占めます。また、ドライバーが死亡する割合は追突事故以外に比べ、約3倍にも及びます。今回は、このような追突事故が起こる背景を、実際の事故をご紹介しながらご説明いたします。
追突事故に限らず、事故の背景には【ドライバーの過労】の問題が存在します。平成27年度の巡回指導の結果によると、約2割の事業所において、ドライバーの過労を防止する施策が行われていないことが確認されました。全国貨物自動車運送適正化事業実施機関の巡回指導の内容は、過労を防止するために配慮された勤務時間、乗務時間を定め、それらを基に乗務割を作成し、適切な休憩時間や睡眠時間が管理されているかを調査するものです。この調査結果により、ドライバーが過労になりやすい環境が根付いてしまっていることがわかりました。
平成26年11月27日、愛知県犬山市の国道41号線で、ガソリンなどを積載したタンク車が走行中、交差点手前で乗用車に追突し、追突したことが原因で合計9台の多重追突事故が発生しました。この事故に関係した車両の運転者6名及び同乗者3名の、合計9名が軽傷を負い、タンク車のタンクが損傷して積載していたガソリンなど6,000リットルが路上に漏えいしました。
タンク車の運転者が、疲労と睡眠不足で集中力が低下している状態で休憩場所を探しながら走行していたことが原因で、赤信号で停止しようと減速していた乗用車に気づくのが遅れ、追突したと予想されます。運転者は点呼の際に、睡眠不足により疲労が残っていたことを申告しませんでした。そのため、運行管理者が疲労の度合いを把握できないまま運行の可否を決定していたことも、結果として事故の原因となりました。【出典】国土交通省・事業用自動車事故調査委員会・公表済み報告書より抜粋
平成26年度における追突事故件数において、人身事故が9,292件、死亡事故が58件ありました。自動車全体の事故に比べてトラックの追突事故は約3.6倍も起こりやすく、平均人身損失金額は約1.4倍です。追突事故によってドライバーが死亡する割合は、追突事故以外に比べて約2.8倍にものぼります。死亡事故のうちでも、追突による死亡事故は2割弱、特に高速道では4割超を占めています。このように、トラックの追突事故は発生件数が多くドライバーが死亡する事故につながりやすいのです。事故を起こした場合の追突車は100%の過失を問われます。前方に交通違反の車両があった場合でも、70%の過失を問われます。このため、運送業界全体での最優先課題の一つとして、トラックの追突事故の防止に努める必要があります。
ドライバーの体調管理を徹底することで防げる事故がたくさんあることがお分かりいただけたでしょうか。運行管理者も、ドライバーに対してしっかり疲労の度合いを確認し、ドライバーも、自身の体力を過信せず、適度な休憩と睡眠を確保しましょう。