昨今原油価格の高騰によるガソリンの値上げが続いています。運送会社にとって燃料費は人件費に次いで占める割合の大きな経費です。コスト削減のためにエコドライブが見直されています。今回はエコドライブを実現するため、環境に優しい運転方法とその効果を解説いたします。参考にしてください。
エコドライブとは燃料消費量や二酸化炭素(CO₂)の排出量を減らし、地球温暖化防止につなげるために行う運転方法や行動のことです。穏やかな運転を心掛けることによる安全性の追求を行います。これにより排出ガスの抑制、事故防止、経営コスト削減など「環境」、「安全」、「経営」 の3つの効果を期待できます。企業が取り組む環境対策における重要な取り組み課題であります。
エコドライブを実施することで得られることは、燃料費のコスト削減だけではありません。「環境問題」「事故防止」「経営問題」3つに分けて効果を紹介します。
地球温暖化の原因の一つは温室効果ガスの排出と言われています。温室効果ガスの中で最も大きな割合を占めるのが二酸化炭素です。実際に2019年度の日本のCO₂排出量のうち、全体の約18%が、自動車などの運輸部門から出ているという報告があります。
運輸部門の内訳では、その約6割が旅客輸送、 約4割が貨物輸送に起因しており環境への負荷が大きいことがわかります。エコドライブを実践することで二酸化炭素(CO2)などの排出量が減少する効果が期待できます。
エコドライブの基本は、穏やかな運転に徹することです。急ブレーキや急加速をしない運転方法は、安全運転を行うことと同じ効果があります。事故防止、とりわけ追突事故の防止に大きく役立ちます。事故を未然に防止できれば、事故そのものだけでなくその処理にかかる損失や費用の削減にもつながります。
エコドライブを徹底して行えば、消費する燃料の量が減少し、ガソリン代の節約につながります。その結果、コスト削減などの経営上のメリットも期待できます。
また安全で環境に優しいエコドライブをしていると、信頼度が上がり社内外から評価されるようになります。サービスの品質向上にもつながるでしょう。
「エコドライブ10のすすめ」とは、車から排出される二酸化炭素の量を極力少なく抑えるための運転方法をまとめたものです。警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省で設置された「エコドライブ普及連絡会」が普及推進を図っています。
平成15年に策定されましたが、一定期間経過していることから、令和2年に項目の見直しがされました。項目と項目の詳細は以下の通りです。
1.自分の燃費を把握しよう
2.ふんわりアクセル「eスタート」
3.車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転
4.減速時は早めにアクセルを離そう
5.エアコンの使用は適切に
6.ムダなアイドリングはやめよう
7.渋滞を避け、余裕をもって出発しよう
8.タイヤの空気圧から始める点検・整備
9.不要な荷物はおろそう
10.走行の妨げとなる駐車はやめよう
自分の車の燃費を把握することを習慣にしましょう。日々の燃費を把握すると、自分のエコドライブ効果が実感できます。車に装備されている燃費計・エコドライブナビゲーション・インターネットでの燃費管理などのエコドライブ支援機能を使うと便利です。
発進するときは、穏やかにアクセルを踏んで発進しましょう(最初の5秒で、時速20km程度が目安です)。日々の運転において、やさしい発進を心がけるだけで、10%程度燃費が改善します。焦らず、穏やかな発進は、安全運転にもつながります。
走行中は、一定の速度で走ることを心がけましょう。車間距離が短くなると、ムダな加速・減速の機会が多くなり、市街地では2%程度、郊外では6%程度も燃費が悪化します。交通状況に応じて速度変化の少ない運転を心がけましょう。
信号が変わるなど停止することがわかったら、早めにアクセルから足を離しましょう。
そうするとエンジンブレーキが作動し、2%程度燃費が改善します。また、減速するときや坂道を下るときにもエンジンブレーキを活用しましょう。
車のエアコン(A/C)は車内を冷却・除湿させる機能です。暖房のみ必要なときは、エアコンスイッチをOFFにしましょう。また、冷房が必要なときは、車内を冷やしすぎないようにしましょう。たとえば、車内の温度設定を外気と同じ25℃に設定した場合エアコンスイッチをONにしたままだと12%程度燃費が悪化します。
待ち合わせや荷物の積み下ろしなどによる駐停車の際は、アイドリングはやめましょう(※1)。10分間のアイドリング(エアコンOFFの場合)で、130㏄程度の燃料を消費します。また、現在の乗用車では基本的に暖機運転は不要です(※2)。エンジンをかけたらすぐに出発しましょう。
※1:交差点で自らエンジンを止める手動アイドリングストップは、以下の点で安全性に問題があるため注意しましょう。(自動アイドリングストップ機能搭載車は問題ありません。)エアバッグなどの安全装置や方向指示器などが作動しないため、先頭車両付近や坂道での手動アイドリングストップはさけましょう。
※2:-20℃程度の極寒冷地など特別な状況を除き、走りながら暖めるウォームアップ走行で充分です。
出かける前に、渋滞・交通規制などの道路交通情報や、地図・カーナビなどを活用して、行き先やルートをあらかじめ確認し、時間に余裕をもって出発しましょう。さらに、出発後も道路交通情報をチェックして渋滞を避ければ燃費と時間の節約になります。たとえば、1時間のドライブで道に迷い、10分間余計に走行すると17%程度燃料消費量が増加します。
タイヤの空気圧チェックを習慣づけましょう。タイヤの空気圧が適正値より不足すると、市街地で2%程度、郊外で4%程度燃費が悪化します。また、エンジンオイル・オイルフィルタ・エアクリーナエレメントなどの定期的な交換によっても燃費が改善します。
運ぶ必要のない荷物は車からおろしましょう。車の燃費は、荷物の重さに大きく影響されます。たとえば、100kgの荷物を載せて走ると、3%程度も燃費が悪化します。また、車の燃費は、空気抵抗にも敏感です。スキーキャリアなどの外装品は、使用しないときには外しましょう。
迷惑駐車はやめましょう。交差点付近などの交通の妨げになる場所での駐車は、渋滞をもたらします。迷惑駐車は、他の車の燃費を悪化させるばかりか、交通事故の原因にもなります。迷惑駐車の少ない道路では、平均速度が向上し、燃費の悪化を防ぎます。
エコドライブの実施には運転テクニックだけでなく、点検整備が欠かせません。しっかりと日常点検・定期点検を行うことは、運転中のトラブルを防止するだけでなく、環境にも効果が期待できます。
タイヤの空気圧が 200kPa(キロパスカル)(= 2.0kgf/cm2)低い と、燃費は約3%悪くなるといわれます。空気圧が高いと燃費は良くなりますが、安全上の問題が生じることになります。コード切れ及びバースト、タイヤの寿命の短縮、偏摩耗、乗り心地の悪化などの問題があります。したがって、タイヤの空気圧は常に適正な範囲にしておかなければなりません。
エア・クリーナーの役割は、エンジンの燃焼室に吸入する空気に泥やほこりなどの不純物が混入するのを防ぎ、シリンダの摩耗を減らし、燃焼状態を良好に保つことにあります。 このエア・クリーナーが目詰まりすると、吸入空気量が少なくなり、燃費が悪くなり出力が低下するだけでなく、黒煙の量が増加することになります。必要に応じて清掃や交換を行いましょう。
エンジンオイルの劣化は、汚損、酸化、添加剤消耗の3つに分けられます。長時間の使用 によるこれらの劣化が、エンジン性能に悪影響を与えることになります。このため走行距離などに応じて適切なエンジンオイルの交換が必要となります。エンジンオイルを寿命以上に長く使うと、エンジンオイルの粘度が高くなり、エンジンを傷めるだけでなく燃費も3〜5%悪くなります。
今回はエコドライブについて紹介しました。
エコドライブを実現するためにできることはたくさんあります。
毎日の習慣を見直して、環境に優しく穏やかな運転を心がけましょう。
参考記事:エコドライブ推進手帳
https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/publication/techo_ecodrive.pdf
エコドライブ推進マニュアル
https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/kankyo/echo_drive.pdf
経済産業省 「エコドライブ10のすすめ」を改訂しました
https://www.meti.go.jp/press/2019/01/20200127004/20200127004.html