安全なトレーラー走行には、高い運転技術はもちろん、柔軟な思考による事故の未然予防対策や十分な事前のチェックと、様々な状況に対してスピーディで慎重な判断力が求められます。今回は安全なトレーラー走行におけるポイントを見ていきましょう。
まずは運転姿勢です。一口に運転姿勢といっても様々なチェックポイントがあります。正しい運転姿勢を取ることで、視界が広くなり、運転による疲労も大幅に軽減されます。それでは、一緒に正しい運転姿勢とはどういったものか、一緒に見ていきましょう。
大きなトレーラには、非常に多くの死角が存在します。その死角を補うには、正しい運転姿勢とミラーの活用が欠かせません。また、右左折時や後退時等の車両が折れ曲がる際には、ハンドルを切る前に死角になる部分の安全を確認しておくことが大切です。
正しい運転姿勢でも死角は多い、不安があれば止まって再確認
トレーラーは荷物を積載している「積載時」と、何も積載していない「空車時」や「単体時」の、大きく2種類の車両の状態が存在します。その違いをしっかりと認識して、走行時にはそれらの特性にあった運転をする必要があります。
空車時やトラクタ単体時の急ブレーキは危険
積載時と空車時では重量差が大きいことから、動力性能に大きな差を生ずる
速度コントロール、ギア・チェンジなどの操作が相当異なることを覚えておかなければならない
トレーラは2つの車両を連結しているため、運転席に荷台の挙動が伝わりにくく、荷台に傾き等の異常が発生してもドライバーの感知が遅れる場合があります。
積載時と空車時の運転感覚の違いに注意
トラクタなど大型車の運転席から見た視界と乗用車の視界には大きな違いがあります。トラクタは、乗用車の約2倍の地上2.5メートルほどで、下を見下ろすようになり実際の距離より長いと錯覚します。そのため、トラクタのドライバーは前車との距離空間が広く見えて実際よりも余裕があると感じ、車間距離を詰めすぎる傾向があります。
前車との距離空間が広く見えるため、実際より余裕があると感じ、車間距離を詰めすぎる傾向がある。
視点が低い分近く感じる。
前述でもお伝えした通り、トラクタの運転席から見た視界と乗用車の視界には大きな違いがあります。このためトラクタなどの大型車は、いつの間にかうつむき加減の楽な運転姿勢をとってしまうので、無意識のうちに視線は下向きになり、足元(直近の路面)を覗き込むように走行します。とくに、高速道路での夜間走行ではヘッドライトの照射範囲に限られ、ますます下向きのまま視線が固定されがちになってしまいます。しかし、常時下向きでいるわけにもいきませんから、視線を上げて前方を見なければなりません。そのため、トラクタのドライバーは無意識に視線の上下運動を繰り返し、単調な眼球動作になります。この動作はドライバーが眠くなる危険性をはらんでいますから注意が必要です。
視界が分断され、灯りが路面上のものかどうか判断しにくい。
トラクターはドライバーの視線が下向きになりやすい
路面上の灯りが連続した視界のなかで認知できる。
乗用車は水平方向の視線が無理なく保てる
狭めの道路を左折する場合など、トラクタ・トレーラは内輪差が大きいため、一旦右に振ってから曲がることがあります。また、左側のミラーに映る範囲も狭く、左後方の死角が大きくなり、二輪車などを見落とし、巻き込むことがあります。
右折時は、右折する側の道路に停止している車にトレーラ部分が接触することがありますから、右左折時には、側方や後方など周囲によく目を配るようにします。
目視、ミラーでも見えない死角はいったん停止で確認を
きついカーブでの対向車線のはみ出しに注意してください。
右カーブの場合は、トレーラの内輪差により後輪が道路内側に寄る。
左カーブの場合は、トレーラの前部はトラクタより外側に張り出した状態になる。
カーブは対向車の動きにも十分注意
連結車両は全長が長いので、追い越しや車線(進路)変更はできるだけ避けるようにします。追い越しを行う場合は、非常に長い距離が必要になるので、前後に十分余裕があるときに行うようにします。
後続車両に追い越されるときは、追い越されるのが終わるまで自車の速度を上げないようにします。追い越し車両が直前に割り込んでくることもあるので注意してください。
車線(進路)変更を行う場合は、目視をはじめ、バック・ミラーなどで安全を確認し、ウインカーで早めに合図をして、後続車などが気がついたと思われるのを待ってから進路変更するようにします。
前後に十分 げない 余裕があるときに行う
追い越しされるのが終わるまで速度を上 前後に十分 げない
早めの合図
トレーラ走行時の挙動は速度、ハンドル操作に大きく依存します。
進路変更等の際、トラクタの運転席ではトレーラの挙動が伝わりにくいため、トレーラのタイヤが浮いている状態でも、運転席では認識できません。また、3軸車に比べて2軸車トレーラの方がロール角度が大きい傾向にあります。2軸車トレーラはより注意が必要です。
実際には、気象条件、道路コンディション、積荷の積載状況、運転方法等により、条件が異なるため、これまで安全だった速度以下でも、横転する可能性は十分にあります。
急なハンドル操作はトレーラの横転原因
長い下り坂を走行する時は、トレーラブレーキを使用しますが、単独使用を避け、排気ブレーキ、リターダブレーキ等の補助ブレーキを併用して、速度を落とします。
トレーラブレーキの使用は必要最小限に
急な上り坂ではトラクタとトレーラが接触したり路面にシャーシが衝突することもあります。
ゆるやかな下りカーブはとくに注意
①低床トレーラはとくに「ハラツキ」に注意
低床式トレーラなどは、盛り上がっている踏切路面で「ハラツキ」になり、立ち往生するケースも見られます。
下車してよく確認しましょう
※橋梁の継目や舗装の段差があるとハンドルをとられたり、トレーラにおされたりして車両が不安定になることがあります。
②踏み切りを渡った先の状況もよく注意
渋滞等による踏み切りでの立ち往生や車体の後部が踏み切りに残るおそれがある場合は進入しないようにしましょう。
車体の長さを考えて
③道幅の狭い踏切では落輪しないよう十分注意
対向車があってすれ違うのがギリギリの場合は、対向車を先に通しましょう。
車両の長さ、高さを意識すること
積載物の高さをよく確認し、車高制限のある場所では衝突しないように注意しましょう。
ガード等への衝突事故は、鉄道・道路をストップ
円滑な交通に多大な影響を与えます
トンネル内を走行する場合には、高さ制限標識、対向車、トンネル内の照明など設置物への接触等に注意のうえ、十分に速度を落として走行しましょう。
運行前の経路確認をしっかりと
・視界が悪くなる
・路面が滑りやすい
・雨が降り始めたら、スピードを落とす
・進路変更はしない
スピードダウンで、視界確保とスリップ予防
いかがでしたでしょうか。トレーラーの安全走行には様々な注意ポイントがあり、ドライバーの皆さんは常日頃からそれらをこなして、日々の業務を安全に遂行されているんですね。ドライバー当事者の方だけでなく、周りのドライバーも安全を心がけていきましょう。