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近年トラックドライバーの不足が深刻化しています。特に過疎地域では輸送需要の減少により既存の輸送手段を維持できなくなりつつあることが課題となっています。そこで過疎地域における輸配送の効率化、機能を維持していくために、ドローンを活用した荷物等の配送が期待されています。
今回はトラックドライバーが不足している背景と、物流界の救世主になり得るドローン物流について解説したいと思います。
ドライバーの高齢化と若手ドライバーの減少により、トラックドライバーが不足しています。働き方改革や生産性向上が提唱される中、長時間労働・拘束時間や体力的負担が大きいという理由からドライバーを敬遠する若者も存在しています。
またコロナ禍でECビジネスの需要が高まりました。仕事量は増加しているにも関わらず圧倒的にドライバー数が少ないことから、市場の旺盛な需要に供給が追い付かずアンバランスな状態となっています。日時指定など配送業務の複雑化でドライバーへの負担が大きくなるばかりです。
こうした背景から新たな配送の手段として注目されているのが「ドローン」です。ドローンを操作するのはもちろん人ですが、直接赴く必要がなく運送業の人手不足を補えます。交通渋滞を緩和することが可能、運搬時のコストを抑えられるなどのメリットもあります。日本国内でドローン物流が実現すれば、荷物をよりスピーディーに運べるようになることが期待されています。
2021年6月11日に航空法が改正されました。2022年12月以降、飛行経路下への第三者の立入りを管理せずに操縦者から目の届かない距離までドローンを飛行させる「目視外、補助者なし、立入管理なし」(レベル4)の飛行が可能となる見込みとなりました。最新版のロードマップ2021では、レベル4を2022年度を目途に実現する目標が掲げられています。
レベル4飛行については、当面の間は、山間部等の人口密度の低いエリアに限られることになりそうですが、空を活用することで、道路という既存インフラに制限されず、物流に新たな可能性が生まれるでしょう。
飛行レベル1:目視内・操縦飛行
飛行レベル1は「目視内・操縦飛行」で、見える範囲で手動操作する一般的なドローン利用の形態を指す。農薬散布や映像コンテンツのための空撮、橋梁や送電線といったインフラ点検などがこのレベルに該当する。
飛行レベル2:目視内飛行(操縦無し)
飛行レベル2は「目視内飛行(操縦無し)」で、見える範囲で自動運転機能を活用した飛行を行うものを指す。例としては、空中写真測量やソーラーパネルの設備点検などが挙げられる。
飛行レベル3:無人地帯での目視外飛行(補助者の配置なし)
飛行レベル3は「無人地帯での目視外飛行(補助者の配置なし)」で、住民や歩行者らがいないエリアにおいて目の届かない範囲まで飛行する形態を指す。離島や山間部への荷物配送、被災状況の調査、行方不明者の捜索、長大なインフラの点検、河川測量などがこれに該当する。
飛行レベル4:有人地帯(第三者上空)での目視外飛行(補助者の配置なし)
飛行レベル4は「有人地帯(第三者上空)での目視外飛行(補助者の配置なし)」で、市街地などを含めたエリアにおいて目の届かない範囲まで飛行する形態を指す。都市の物流や警備、発災直後の救助、避難誘導、消火活動の支援、都市部におけるインフラ点検などがレベル4として考えられる。
いよいよドローンの有人地域における目視外利用、いわゆる「レベル4」と呼ばれる規制緩和が実現され、輸送や監視などで本格的な活用が始まります。
ドローン物流・点検の実現に向けた実証実験は全国各地で行われています。
【プロジェクト実施者】
日本航空(JAL)、KDDIなど
JALとKDDIは23年度にドローン物流の事業化を目指しており、医薬品配送のビジネスモデルを検討しています。災害などの緊急時でも、空から迅速に薬を届けられる物流網の構築が期待されます。今年2月の実験では、医薬品卸メディセオの物流拠点から隅田川上空を約2キロ飛行し聖路加国際病院付近に約10分で運ぶことに成功しました。またドローン1機で1日あたり10回の配送を見込めたといいます。
今後、国のガイドラインに基づき、配送中の薬の温度変化や固定状況を検証する。発注から納品までの時間やプロセスも分析し、病院や薬局が希望する時間と場所に届ける「オンデマンド配送」の実現性を目指しています。
【プロジェクト実施者】
佐川急便株式会社、イームズロボティクス株式会社、
一般財団法人日本気象協会、株式会社サンドラッグ
このプロジェクトでは、住民等から注文を受けた商品を地域の小売店舗から当日中に配達することなどを目指しています。ドローンを活用した新たな配送手段を構築することにより、山間地域の物流機能を強化し、生活利便性の向上を図ります。
【プロジェクト実施者】
静岡県防災部地域防災課
静岡県焼津市では災害対策本部機能の強化、災害情報の見える化を実現するため、2015 年 7 月にドローンを導入。翌 2016 年に防災航空隊「ブルーシーガルズ」を結成しました。消防活動への参加、ほか有事の出動、災害に備えた訓練に加え、全庁運用を目指し活動範囲を拡大中。複数の部局の職員で構成され、災害発生時に限らず、 広報、港湾、建設、農政などの平時においてもドロー ン活用を行っています。
この他の自治体のドローン・自動配送ロボット等の利活用促進に向けた調査報告はこちらをご覧ください!
ドローンモデル自治体/令和3年度 産業経済研究委託事業>>
ドローンを物流に導入することは決して簡単なことではありません。ドライバーが直接配送するのとは異なり、ドローンが荷物を途中で落下させてしまう可能性が否定できないからです。墜落や接触のトラブルをいかに回避するかが課題であります。
しかしデメリットよりもメリットの方が多く、日本が抱えている社会問題を解決してくれる救世主となるでしょう。ドローン物流が当たり前になる社会もそう遠くはありません。