原油価格が高騰しています。
1月24日時点でレギュラーガソリンの小売価格が全国平均170円を超えました。
およそ13年ぶりの高騰となり、様々なところで大打撃。
政府はガソリン価格の高騰抑制のために設けた補助金制度を初めて発動しました。
こちらの緊急措置はガソリンスタンドに卸す「元売り会社」に1リットルあたり3円40銭分を補助するというものです。
補助金支給の期間は3月末までで、支給額は5円を上限に毎週見直されます。
急激な上昇は抑えられても、小売価格に反映されるかどうかは各店舗の判断となります。
原油高は製造や輸送などに影響を及ぼすことから、原材料費の高騰につながる恐れがあります。またコロナ禍で移動の手段としてクルマを利用することが増えたことから、国民の足にも影響が出るとみられます。
今回は原油高騰の背景とこれに関連した対策を紹介していきます。
原油の高騰はクルマなどの移動費に大きな影響を与える他、ペットボトル、レジ袋、洗剤、クリーンニング用品など製造に石油を使った生活必需品にも影響を及ぼします。ボイラーの燃料・重油が上がっていることから、ハウス栽培の野菜や果物の価格にも影響が出るのではないかと心配されています。
クルマを乗らない人でも日常生活に支障をきたす可能性があるでしょう。
原油高騰の理由は、世界的に需要に供給が追い付いていないことにあります。
新型コロナの感染拡大で世界的に止まっていた経済活動もワクチン接種が進んだことにより再開しました。経済が動き始めると工場や物流を稼働させるのに原油は欠かせなくなります。しかしアメリカ北東部で発生した巨大ハリケーンによる石油施設の操業停止や、中東で石油施設の爆発や火災が相次いだことで原油の供給に滞りが起きたのです。
次に原油高騰による世界の対策と日本の対策についてみていきます。
昨年11月、世界的原油高が続いていることから、アメリカが主導するかたちで、日本や中国、韓国、インド、英国と協調して石油の備蓄を放出することを発表しました。
この石油の放出は、1970年代に起きたオイルショックから設立された国際エネルギー機関(IEA)が加盟国30か国に呼び掛けることで、今までも何度か実施されてきました。
石油備蓄の放出は自然災害などで供給に支障が生じた緊急時に実施されるものですが、今回は異例の「原油価格上昇の対応策」として行われることになりました。
各国が協調放出しても原油価格が下がるとは限らないため、効果に疑問の声が上がっています。
日本は石油を中東からの輸入に頼っています。1970年代のオイルショックの教訓から石油備蓄法を定め、中東の政治情勢が不安定になったときに備えて石油を備蓄しています。国が所有する国家備蓄は約145日分以上、石油会社に義務付ける民間備蓄は90日分以上とすることが石油備蓄法で決められています。
自然災害以外ですので日本の法律的にはできないことですが、政府は石油の売却時期を前倒しする方法で対応することにしました。
保管している石油の一部は年に数回、新しい石油に入れ替えをします。
古い石油は入札によって石油元売り会社や商社などに売却されますが、今年春以降の予定を前倒しして一時的に備蓄量を減らす形で石油を放出するということです。
「燃料油価格激変緩和対策事業」とは、原油価格の更なる高騰がコロナ下からの経済回復の重荷になる事態を防ぐことを目的として、資源エネルギー庁が実施する時限的・緊急緩和措置です。手当を行うことで小売価格の急騰を抑え、消費者の負担を軽減させることを目的にしています。
全国平均ガソリン価格が1リットル170円を超えた場合、1リットル5円を上限として、燃料油元売りに補助金を支給。直接小売価格を今よりも安くする制度ではないため、価格は各店舗の判断に委ねられます。
・参考
NRI「石油備蓄放出での各国協調と原油高の経済効果」
NHK NEWS WEB「石油備蓄の放出なぜやるの?」
海外からの輸入に頼っている日本によって、国内の原油価格は世界の政情に大きく左右されます。オミクロン株の感染拡大により働き手が不足、物流の停滞も心配されます。
今後の原油価格の動向に注目です。