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IEA国際エネルギー機関によると
世界市場における電気自動車、
プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)を含むEV車の販売台数は
2021年に約660万台に上ったといいます。
これは新車の自動車の販売台数全体の約8.6%を占めます。
2019年では2.5%、2020年では4.2%でしたので
2021年にはEV車の勢いが非常に伸びてきていることがわかります。
EV車の販売台数の大幅な増加の背景には
「ZEV規制」の影響が大きいと言われています。
Zero Emission Vehicle規制の略称
1990年
大気汚染の実害が深刻だったアメリカ、カリフォルニア州が
導入した自動車の規制で、
州内で一定台数以上自動車を販売するメーカーは、
販売台数の一定比率を電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)など
排出ガスを出さないゼロエミッション車(ZEV)にしなければならないと義務付けたものが
「ZEV規制」になります。
そもそもカリフォルニア州は
面積ではアメリカで3番目に大きな州で
大都市ロサンゼルスの他、サンフランシスコ、サンディエゴ等の主要都市も多いため
州人口はアメリカ最大となり、
州内の自動車登録台数は約3,500万台(2018年時点)と正に自動車大国、
そして 新車販売の1割以上を占める米国最大の自動車市場とされています。
さかのぼること1951年のアメリカでは
自動車販売台数が 627万台、
1955年には 800万台を越え、
急速に普及が進んでいました。
既にその頃から
都市部では 排気ガスによる大気汚染や健康被害も既に問題視され
全米50州のなかでもとりわけカリフォルニア州は
大気の滞留が起こりやすい盆地が多く、
大気汚染が深刻化していました。
カリフォルニア州では 1962年に米国初となる排気ガスの規制を
州法として規定しました。
それが州内で販売される車両に搭載されるエンジン部品に規制をかけた
「クランクケース・エミッション規制」です。
このようにカリフォルニア州は排気ガスの規制の先駆者であり
その後の規制についても大きな影響力を示し
とりわけZEV規制は ニューヨーク州など他10州も導入しています。
1988年に登場した「ZEV規制」は
段階的に自動車メーカーには厳しい販売比率や条件に改定されてきています。
そのたびに 自動車メーカーは 「カリフォルニア州仕様」
とも言われる車種の開発や改良をしなければならず、
新型の排ガス対策機器の搭載や触媒の連装化や
エンジン自体の特殊な改修を盛り込みました。
2018年当時は
ZEV販売比率は16%となり、
クリアする対象車は
電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)、
そしてプラグインハイブリッド車(PHV)となります。
加えて、同州内で2017年に6万台以上のクルマを販売した12社が対象になり、
日本のメーカーではトヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、マツダの4社が対象となりました。
このように多くの自動車メーカーは
事実上EV化を迫られ、開発、販売する方向性を見出さなくてはなりません。
次世代型の自動車開発が活性化する一方、
厳しいZEV規制をクリアすることは容易ではありません。
定められた基準に到達していない場合は
カリフォルニア州大気資源局に納付する「罰金」が発生します。
この「罰金」回避策として
「クレジット」が利用されています。
ZEV規制では
ZEVの販売台数が一定比率を上回った場合
自動車メーカーは「クレジット(CO2削減量/実績係数)」が得られるという制度があります。
また逆に下回ってしまった場合は
先に記したように「罰金」を支払うか、
もしくは 「クレジット」を多く保有する他メーカーからクレジットを購入しなければなりません。
カルフォルニア州に支払う罰金は
1クレジット=5000ドル
自動車メーカー同士の取引になる場合、非公式ながら罰金よりも安い価格と言われています。
電気自動車メーカーのテスラ社は
このクレジット販売によるビジネスを成功させ
利益を膨れ上がらせたのはご承知の通りでしょう。
最新のZEV規制案では
メーカーごとの新車販売に占めるZEVと一定の条件を満たしたPHVの販売台数の合計比率を、
下記のように義務付けています。
2026年→35%以上
2028年→51%
2030年→68%
このように年々比率は高められ
下記の通り、車両の基準も厳しく制限され、
自動車メーカーは休む間もなく条件を
クリアする車種を改良、開発することが求められます。
新ZEV規制の詳細
・2035年までに新車は全てZEV(EV・FCV)、
PHVに義務付ける
・PHVは電気だけで最低約80km(50マイル)を
走行可能な車種に限る
・PHVはZEVとの合計台数の20%以下のみ有効とする
・EVとFCVは航続距離150マイル以上の車種のみ有効とする
・10年間又は15万マイルの走行で航続距離の劣化は
20%未満を要求
*26~29年モデルは30%未満
・8年間又は10万マイルの走行で75%の
電池の容量保証を要求
*26~30年モデルは70%
・未達成について1台当たり最大2万ドルの罰金
クレジット売買による相殺での時限的な措置ではなく
段階的にEV化が促進されることと同時に
自動車産業、物流インフラの活性化、
そして何より
大気汚染等の環境問題や
健康被害の改善効果の高まりに期待がよせられています。
大気の滞留が起こりやすい盆地が多く、
大気汚染が深刻化していた米国カリフォルニア州から発祥した「ZEV規制」。
自動車メーカーは 年々厳しくなるこの規制に伴い、
排出ガスを出さないゼロエミッション車(ZEV)への開発を続け
2035年までにすべての新車販売を目指しています。