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数ある交通手段の中でもいち早く自動運転を実用化した「鉄道」分野では
現在、無人運転を行う路線は
ゆりかもめ東京臨海新交通臨海線、東京都交通局日暮里・舎人ライナー、
神戸新交通ポートアイランド線、神戸新交通六甲アイランド線等
全国に10路線もあります。
一方、鉄道と同様の主要交通インフラとして
普及が望まれる「バス」の自動運転の
動向はどうなっているのでしょうか
自動運転の車両とは
人の手を使用することなく 機械が自立的に操縦することが可能な車両になります。
まず そのような自動運転の車両が普及すると
どのようなメリットがあるのでしょうか
交通死亡事故のうち97%が
ドライバーの危険運転や不注意による違反に起因するという中で
法律を順守した安全な走行で
ヒューマンエラーを起こさない自動運転車には
安全な交通社会の実現に高い期待が寄せられています。
2019年の総務省の調査によると
トラックドライバーの4割以上が50歳を超えたシニアドライバーだそうです。
若年層、女性、外国人ドライバーの人材確保に翻弄する業者には
自動運転トラックによる貨物輸送の実現は急務でしょう。
そして
国土交通省によると、全国の路線バス事業者のうち約7割が赤字事業者といいます。
路線の縮小等の経営努力と財政支援により、
なんとか運行している事業所が多い中で
地域住民の移動手段が自動運転による運行となれば
ドライバー不足、人件費の課題をクリアできます。
過疎地域における公共交通の赤字路線の撤退が相次ぐ中で
その地域住民の移動手段の確保が課題となっています。
また、このような背景から増え続ける高齢ドライバーが
免許証返納に躊躇する状況に繋がっていることも社会問題の一つとなっています。
国土交通省の「運転支援技術・自動運転技術の進化と普及」によって
自動運転の車両には
5つの自動操作のレベルが定義されています。
ドライバーと車が担う運転動作の比率や、
テクノロジーの到達度、
走行可能エリアの限定度合いなどから、
自動運転を定義づけたものになります。
https://www.mlit.go.jp/common/001213451.pdf#_ga=2.250562560.722879117.1661409861-208352552.1661409861
レベル1
運転支援
システムが前後、左右いずれかの車両制御を実施
例)
・自動ブレーキ
・ACC:前の車について走る
・LKAS:レーンキープアシスト=車線からはみ出さない
レベル2
特定条件下での自動運転機能(高機能化)
例)
ADAS:先進運転支援システム
高速道路での自動運転モード機能
①遅いクルマがいれば自動で追い越す
②高速道路の分合流を自動で行う
特定条件下での自動運転機能(レベル1との組み合わせ)
例)
・ACC+LKAS車線を維持しながら前の車について走る
レベル3
条件付き自動運転
システムが全ての運転タスクを実施するが、
システムの介入要求等に対してドライバーが適切に対応することが必要
レベル4
特定条件下における完全自動運転
特定条件下においてシステムが全ての運転タスクを実施する
レベル5
完全自動運転
常にシステムが全ての運転タスクを実施する
レベル1の衝突被害軽減ブレーキは2021年11月に国産新車の義務化が始まっており、
2025年12月に継続生産車についても義務化される予定です。
レベル2の装備についても各メーカーの中級車から新型車を中心に標準装備され始めています。
現在、実用化されているのは自動運転レベル3となっています。
具体的には 渋滞運転機能「トラフィックジャムパイロット」を搭載した車両をホンダがリース販売しています。
各メーカーが自動運転の技術の向上に尽力していても
従来の交通ルールに関する法律も追いつかなくては実用化には至りません。
日本のみならず世界各国で自動運転の普及を見据えた法整備が急務となっています。
東京五輪の選手村で走行していたトヨタの自動運転バスは
記憶に新しいのではないでしょうか。
自動巡回運転の機能は備えるが、
オペレーター1名が乗車する利用で
定員は20名、車いすの場合 4名+立ち乗り7名のバスで
最高速度は19km/hという車両でした。
「レベル4」仕様のこの車両は当時大変話題になりました。
以降 全国各地で自動運転バスの実証実験が行われています。
例えば
静岡県掛川市では 運転手不足の解消と代替サービスの構築のため
小型バスの自動運転の実証実験を行っています。
このバスも19km/h以下での走行になり
距離も約1キロ区間と短い。
市役所内の誰でも見られる場所に
遠隔監視のセンターを設け、操縦席も用意し
車両外の10個のカメラ映像を遠隔監視するといいます。
市街地と過疎地での比較走行に加え
夜間帯での実証実験は全国でも初の試みだそうです。
2020年から自動運転バスを導入している茨城県境町では
もともと鉄道駅がなく、路線バスも不十分なエリアだったため
町の中心部を通る往復約6~8㎞を無料で走行するバスは
地域住民の移動手段として非常に有効で
地域経済を活性化する効果も確認できているそうです。
また
このバスも20km/h未満での走行速度のため
他の車両もこれに影響され速度を守るようになったといいます。
現在のところ
車内のドライバーに加え、遠隔監視のオペレーターも常駐していますが
信号機の整備が整う等すれば
将来的にレベル4の無人運転となることを想定し
実用化しつつもデータを蓄積し
より安全に効果的に自動運転バスの走行を進化させています。
「バス」は公共交通機関として多くの人々の移動手段です。
しかし 地方部の路線バスの約9割は赤字路線、
少子高齢化社会で運転手も不足する現況です。
この困難な状態を自動運転バスの導入により効果的に改善、活性するか
全国各地で実証実験が行われています