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タイヤがトラックのすべてを支えるているという話はすでにこのコラムで触れましたが、タイヤの役割が重要である分、メンテナンスも必要となってきます。
タイヤ表面のゴムは路面との摩擦により摩耗します。
乗用車の場合、摩耗したタイヤは新品と交換するのが通常ですが、大型トラックの場合、タイヤのサイズが大きいため、交換費用もかさみますし、なによりも環境に対する負荷が大きくなってしまいます。
そのため、タイヤをまるごと交換するのではなく、タイヤの表面だけを加工して新しくする「リトレッド」と呼ばれる手法がとられます。
リトレッドタイヤとは、具体的にどういうものなのでしょうか?
リトレッドタイヤは、使用済みのタイヤの、トレッド面と呼ばれる、路面と接する部分のゴムを決められた厚さで剥ぎ取り、そこへ新たにゴムを張り付けて再利用するタイヤです。
近年では、天然ゴムと合成ゴムを混合したタイヤ素材の配合を研究したり、タイヤの溝の形状を最適化したりして耐久性、耐候性、環境性能が高められています。
まず、使用済みのタイヤをリトレッドタイヤへ加工する際には、タイヤのゆがみやトレッド面以外の劣化、損傷などがないか十分に確認します。
基準を満たすものだけがリトレッドタイヤへと加工されます。
続いてバフィングと呼ばれる工程に入ります。
これは、使用済みタイヤのサイドウォールの一部を取り除く作業です。
バフィングマシンと呼ばれる特殊な装置を使用して行われ、タイヤ表面が滑らかで均一になるようにします。
続いて、新しいトレッドを使用済みタイヤに巻き付けます。
軟らかいトレッドゴムを接着剤と共にタイヤに貼り付けます。
そして硫化作業に入ります。
軟らかいトレッドゴムを硬化させるため、「硫化チャンバー」という装置に入れて加熱します。
これにより、新しいトレッドゴムは使用済みタイヤと一体化して、新品のタイヤに匹敵する強度と性能が確保されます。
最終検査により安全基準を満たしていることが確認されれば、顧客のもとに出荷されます。
リトレッドタイヤは、新品のタイヤを製造しているメーカー自らが加工するほか、リトレッドを専門に行っている会社もあります。
また、自社で使用していたタイヤをメーカーに渡し、リトレッドタイヤへと加工するサービスもあります。
自社で管理していたタイヤなので安心感もあるほか、元となるタイヤのコストが削減されるため、低コストでリトレッドすることがかのうです。
リトレッドタイヤの歴史は古く、第二次世界大戦中には資源の節約のためとして広く採用されました。
しかし、当時の加工技術では品質面に問題があり、また耐久性も不十分でした。
その後、技術的に進歩が進み、現在では大幅に品質が向上し、新品のタイヤと変わらない安全性、耐久性を持つようになりました。
昨今では、コスト面はもちろんのこと、リトレッドタイヤはCO2の排出量が新品のタイヤに比べて大きく削減できることや、原料となるゴムや石油などの資源の節約など、環境面から注目をされています。
このように、リトレッドタイヤはコスト面でも環境負荷の低さからも需要を伸ばしており、そのシェアは大きくなっています。
特に航空機のタイヤでは、多くのタイヤがリトレッドタイヤとして再生しています。
大型トラックに関しても積極的にリトレッドタイヤの使用が進められており、より環境に優しい輸送手段としての役割のひとつを形作っています。