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雪道は通常の道路よりもたくさんの危険が潜んでいます。雪国はもちろん、近年は首都圏でも思いがけない降雪があるため他人事ではありません。トラックやトレーラーが安全に走行するためには、どのようなことが起こり得るか、事前に知っておくことが大切です。今回は雪道を走る上での注意点や対策、運転方法を解説いたします。本格的な寒さが来る前に「冬支度」をして備えましょう。
降雪時、降雪後には路面の凍結や視界不良による事故に注意が必要です。雪が降る地域では特に以下の2つに気をつけましょう。
冬季における交通事故で最も件数が多いのがスリップによる事故です。薄く雪が積もっている程度でも、凍結によるスリップは十分に考えられますので油断は禁物です。河川などにかかる橋は冷たい風が吹き抜ける場所が多く、凍結しやすいので注意しましょう。
ホワイトアウトは、雪によって視界が奪われてしまう気象現象です。吹雪や大雪が降ると、地面の雪が舞い上がって視界を遮ります。一瞬にして位置感覚や空間認識を失うことから“白い闇”とも言われています。視界の悪化は晴天時にも起こり、雪面は太陽の光の反射によって非常に眩しく見えます。トンネルから出た時に一瞬前方が見えなくなることもあります。毎年ホワイトアウトによる多重事故が発生しています。視界不良の時は、十分な車間距離でスピードを控えめに。少しでも不安を感じたら、安全な場所で停車し、天候の回復を待ちましょう。
雪国の人が、雪の少ない地域の人と比べて雪道での事故が少ないのは、運転技術が高いからではありません。それは、今までの雪道での運転経験により、危険な場所や状況を予測しながら運転しているからです。雪道に不馴れな人でも、雪道で注意すべき場所をあらかじめ知ってから走行することで、危険を回避する確率もグンと上がります。
峠道は、急カーブや日陰部分が多く、凍結し非常に滑りやすくなっています。山間部ということもあり、気温や天気の変化も激しいため、特に注意しましょう。
雪道の坂道が怖いのは、車の荷重が4つのタイヤに均等にかからなくなるためです。登り坂では前輪の負荷が軽くなり、ハンドル操作に影響します。
また、後輪の負荷が高くなることにより摩擦力の低い雪道では後輪がスリップしやすくなります。坂道で停車してしまうと再発進することが難しくなるため、登り坂では途中で止まらずに、できるだけ一気に登りきるようにしましょう。停止してからの再発進は、ゆっくりとゆっくりと、丁寧にアクセルを踏み込んで発進するようにしましょう。
一方、下り坂では、後輪の負荷が軽くなるので、車両のお尻が振られやすくなります。そのため下り坂では細心のハンドル操作とブレーキ操作が必要です。ちょっとしたハンドル操作でも、後輪の接地が弱いために、横滑りする恐れがあります。勾配が緩やかであっても、一度スリップし始めればコントロールが全く効かなくなります。玉突き事故が起こりやすいので、一定速度で慎重に走行しましょう。
想像以上に、滑りやすくなっていることがあります。凍結した路面に、薄雪が積もっている場合は一段と滑りやすくなります。交通量の少ない時間帯に走行するときは、特に気をつけましょう。
また停止線付近は、ブレーキ・発進が繰り返し行われているため、凍結した路面が磨かれたようにツルツルになっていることが多いようです。停止線を示す標識より少し手前で止まる気持ちが大切です。
通常のトンネルの出入口でも、基本的には減速ですが、雪道ではさらに注意が必要です。山からの吹きさらしの風があたり、出入口周辺のみ凍結していることが多々あります。速度を出したままトンネルを出ると、そこは雪道です。
トンネル内で濡れたタイヤで飛び出すと、急な路面変化によって車両の姿勢を崩してしまうことがあります。トンネル自体も緩やかに傾斜があることが多いので、減速して通過しましょう。
アイスバーンとは路面の水分が凍結することを指します。ツルツルとしていて、スケートリンクの上を走っているような状況になります。
圧雪路とは、降雪後に車が走行することで、雪が踏み固められた道路のことです。タイヤで磨かれてツルツルしている状態なので、凍結した道や雪が積もったばかりの道よりは走りやすいと言われています。
ブラックアイスバーンとは、一見すると濡れたアスファルト路面のように黒く見えるのに、実は表面が凍りついている路面のことです。濡れた路面と区別がつきにくく油断してしまいがちです。昼間に積もった雪が解けたときや、雨が降った後の冷え込みが強くなる夜間や明け方は注意が必要です。
クルマの往来によって路面が鏡のようにツルツルに磨かれた状態を言います。特に発進や停止が頻繁に行われる交差点付近でよく起きるもので、もっとも滑りやすいと言われている危険な路面状態です。停車時や発進時のスリップの原因となり、追突など重大な事故につながる危険性があります。
道路交通法等により、積雪又は凍結のため滑るおそれのある道路において運転するときは、タイヤチェーンを取り付け、又は全車輪にスノータイヤやスタッドレスタイヤ等を取り付けることが義務付けされています。違反すると罰則の対象となります。非降雪地域でも積雪・凍結した路面をノーマルタイヤの自動車で走行することは法令違反です。いずれの都道府県でも違反した場合、大型車は7000円、普通車は6000円、自動二輪車は6000円、原動機付自転車は5000円の反則金が課されます。(沖縄県を除く)
タイヤチェーンはタイヤの外周に装着する滑り止め用の器具です。スタッドレスタイヤをはいていたとしても、タイヤチェーンは雪道を走る際に有効なので、常備しておきましょう。
タイヤチェーンを装着することで滑りやすい登坂もより安全になります。後輪がダブルタイヤの車両の場合は、豪雪地帯ではダブル用トリプル形チェーンを装備しましょう!突然の大雪や豪雪に見舞われるとシングルタイヤ用チェーンでは脱出不能になる場合があります。
雪道以外では、装着した状態で高速走行はできないので、必ず現地で装着しましょう。寒い車外では慣れないチェーン装着をする必要があるので、時間にゆとりを持って行動しましょう。
市販されている車のガラス用解氷剤が効果的です。解氷剤のエタノールやイソプロバノールの成分は0度でも凍らないアルコール特性を持ち、フロントガラスの凍結温度を下げることができます。フロントガラスに塗布するだけで凍結を解かすことが可能になります。
霜、氷、雪を取り除くためのハンドヘルドツールです。手軽で便利ですが、やりすぎるとフロントガラスに傷がつく恐れがあるので注意してください。
車内に装備されている「デフロスター」のスイッチをオンにして内気循環で最高温度に設定すると、エアコンの熱がフロントガラスに集中して約10分ほどで視界が確保できます。
単純に汚れを流す目的で「水」をウインドウォッシャーとして使っていたり、普通のウォッシャー液を薄めて使っている場合、寒冷地ではウォッシャータンクやホース内部でウォッシャー液が凍る場合があります。また、走行中に使用した際にフロントガラスが凍結してしまう恐れがあります。冬には低気温に対応するウォッシャー液が必要です。雪用ワイパーを用いたとしても、豪雪時の走行には寒冷地用のウインドウォッシャー液が必須アイテムになります。ワイパーが拭き取った雪が次第に固まり、さらに蓄積され大きくなって視界の妨げになるのを防ぎます。撥水効果のあるものも販売されていますので準備しておきましょう。
自動車のフロントガラスの多くは合わせガラスとなっています。熱湯をかけることは大変危険です!霜がついたガラスの表面温度は0度以下、そこにお湯をかけると外側のガラスは急激な温度変化により膨張してしまいます。外側のガラスと内側のガラスの温度差によって亀裂が生じ、ガラスが破損に繋がることがあります。
雪道を走行するときは、急発進、急ハンドル、急ブレーキは厳禁!路面凍結時にはコントロールを失ってしまうこともあります。また、急いでスピードを出し過ぎすぎるのもとても危険です。冬は、時間にも余裕をもって出かけましょう。
4WD(四輪駆動)、4WS(四輪操舵)、TCS(トラクション・コントロール・システム)、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、など最近の車は安全性を高める機能が搭載されるようになりました。しかし、これらは「走る、曲がる、止まる」といった車の基本的な働きを補助するシステムに過ぎません。車の性能を過信せず、無理な運転をしないことを心がけましょう。
スピードの出し過ぎは、チェーンの膨れ上がりによる車体への接触でチェーン切れの原因となります。
チェーンの緩み、ゴムバンド等のフックへの掛け忘れはチェーン脱落の原因となります。また、チェーンの磨耗・損傷はチェーン切れの原因となりますので定期的な点検を行いましょう。
運行地域の気象や路面情報、さらには例年の初雪時期を確認しときましょう。余裕をもってタイヤ交換やチェーンなど冬装備の準備ができます。
また運転する前に、靴についた雪はよく払っておきましょう。雪がついたままの靴ですと、アクセルやブレーキの感覚がいつもと異なります。足が滑ってペダルを踏み外し、思わぬ危険を招くこともあります。
燃料満タン!冬は給油もお早めに!
雪道は普通の道に比べて燃料消費が早いです。規制や事故による渋滞・ストップ時でも冬は暖房をつけるため、エンジンは掛けっぱなしになります。マイナス10数度にもなる気温の中でガス欠を起こしたら生命の危機に直面することだって考えられます。冬期はいつもより早めの給油を心がけましょう。
走行中は車間距離を十分にとり、心と時間にゆとりを持って行動しましょう。急発進、急加速、急ハンドル、急停止は、車両の姿勢を崩すきっかけになる運転は危険です。
目的地に着いたら、積雪に備えてワイパーを立てておきましょう。ワイパーを立て忘れると、フロントガラスの雪かきがしにくくなります。更に、ワイパーゴムがフロントガラスに凍りついてしまい、はがすのが大変になることもあります。翌日の朝は、雪かきがあることを踏まえて、早めに出かけましょう。
大雪による交通事故やスリップが原因でトラックが立ち往生してしまうと、周辺道路の大渋滞を招き、迂回路のない地域では大混乱を起こしてしまいます。こうした混乱を起こさないためにも、ドライバーには早めの雪道対策が求められます。余裕のあるスケジュールで、心と車間距離を十分にとった運転を心がけましょう。安全第一、雪道の特性を知り慎重に行動しましょう。
参考サイト:雪道対策について/全日本トラック協会https://jta.or.jp/member/anzen/snow2016.html