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インターネット通販(EC)市場の拡大は、私たちの生活に利便性をもたらす一方で、物流業界に新たな課題を突きつけています。その中でも特に注目されているのが、「ラストワンマイル配送」です。
ラストワンマイル配送とは、物流拠点からエンドユーザー(消費者)までの最後の区間における配送を指します。EC市場の拡大に伴い、宅配便の取扱個数は増加の一途をたどり、ラストワンマイル配送の重要性はますます高まっています。
しかし、このラストワンマイル配送には、解決すべき多くの課題が存在します。
不在による再配達は、物流業界にとって長年解決課題となっている深刻な問題です。EC市場の拡大に伴い、宅配便の取扱個数は増加の一途をたどり、それに比例して再配達も増加しています。この再配達問題は、物流会社、ドライバー、そして環境にまで、多岐にわたる悪影響を及ぼしています。
物流会社にとって、再配達は大きな経済的負担となります。再配達のためにドライバーや車両を再度手配する必要があり、燃料費や人件費など、追加のコストが発生します。また、再配達に対応するためのシステム構築や管理にも費用がかかり、企業の収益を圧迫する要因となっています。
ドライバーにとっても、再配達は大きな負担です。再配達のために時間外労働を強いられることもあり、過重労働や疲労蓄積につながります。また、再配達によるストレスや精神的な負担も大きく、離職率の増加にもつながっています。
さらに、再配達は環境問題にも影響を与えます。再配達のためにトラックが何度も走行することで、CO2排出量が増加し、地球温暖化を加速させる要因となります。また、無駄な燃料消費や交通渋滞の悪化など、社会全体にも悪影響を及ぼします。
再配達問題は、単なる物流業界の問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題です。再配達を減らすためには、消費者側の意識改革も必要ですが、物流会社も、宅配ボックスの設置や時間指定配送の促進、再配達を減らすためのインセンティブ制度の導入など、様々な対策を講じています。
・人手不足
EC市場の拡大に伴い、宅配便の取扱個数は増加していますが、ドライバー不足は深刻化しています。業界特有の長時間労働や低賃金といったイメージが、人材不足の要因の一つとされています。特に宅配便は、荷物の積み下ろしや階段の上り下りなど、体力的に負担の大きい作業が多く、若年層の定着率が低いという問題もあります。また、高齢化も進んでおり、将来的にはさらに深刻な人手不足が予想されています。
・コスト増
再配達や人手不足は、物流コストの増加に直結します。また、燃料費の高騰や、環境規制強化による車両の買い替え費用なども、コスト増の要因となっています。EC事業者は送料無料を打ち出すことが多く、物流会社はコスト増を価格に転嫁することが難しい状況です。このため、物流会社の収益が悪化し、サービスの質の低下や、さらなる人手不足を招く悪循環に陥る可能性もあります。
ラストワンマイル配送の課題解決に向けた取り組み
これらの課題を解決するため、物流業界では様々な取り組みが行われています。
・置き配
玄関前や宅配ボックスなど、指定された場所に荷物を置く「置き配」は、再配達を減らす効果的な手段です。非対面での受け取りが可能になるため、感染症対策としても有効です。置き配の普及には、盗難や紛失のリスク対策が重要であり、セキュリティカメラの設置や、補償制度の充実などが求められます。
・宅配ボックス
集合住宅やオフィスビルなどに設置される宅配ボックスは、不在時でも荷物を受け取れるため、再配達を減らす効果があります。宅配ボックスの普及には、設置コストや維持管理費の問題がありますが、国や自治体による補助金制度の活用や、宅配ボックスのレンタルサービスなどが普及を後押ししています。
・共同配送
複数の運送会社が連携し、同じ地域への荷物をまとめて配送する「共同配送」は、トラックの運行台数を減らし、効率化を図ることができます。これにより、CO2排出量の削減やドライバー不足の緩和にもつながります。共同配送の成功には、各社の連携体制や情報共有が重要であり、プラットフォームの構築や、標準化の推進などが求められます。
・ドローン配送
山間部や離島など、配送が困難な地域への配送にドローンを活用する取り組みが進んでいます。将来的には、都市部での配送にもドローンが活用される可能性があります。ドローン配送の実現には、安全性の確保や法整備が課題となりますが、実証実験を重ねることで、実用化に向けた取り組みが進んでいます。
・配送ロボット
自動運転技術を活用した配送ロボットは、人手不足の解消や配送効率の向上に貢献すると期待されています。配送ロボットは、歩道や自転車道を走行し、目的地まで荷物を自動で配送します。実用化には、安全性の確保や法整備が課題となりますが、実証実験を重ねることで、実用化につなげようと試みられています。
・発送・受取ボックスの設置
コンビニエンスストアや駅構内などに荷物の発送・受取可能なボックスを設置し、消費者が好きな時間に荷物を受け取れるようにするサービスも拡大しています。これにより、再配達を減らすだけでなく、消費者の利便性向上にもつながります。発送・受取ボックスの設置には、スペースの確保やセキュリティ対策が課題となりますが、コンビニエンスストアや駅など、既存のインフラを活用することで、効率的な運用が可能です。
・IT技術の活用
AIやIoTなどのIT技術を活用し、配送ルートの最適化や需要予測を行うことで、配送効率を向上させることができます。例えば、AIを活用することで、過去の配送データから最適な配送ルートを導き出したり、天候や交通状況を考慮したリアルタイムのルート変更が可能になります。また、IoTセンサーを活用することで、荷物の位置情報や温度などを管理し、より安全で確実な配送を実現できます。
ラストワンマイル配送は、EC市場の成長とともに、さらに重要性を増していくでしょう。
これらの課題解決に向けた取り組みは、物流業界全体の効率化やサービス向上につながるだけでなく、環境負荷の低減や持続可能な社会の実現にも貢献します。
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