以前の記事でトラックの脱炭素化について解説しましたが、今回はその中でも水素燃料トラックについて掘り下げて解説します。
近年、環境問題への関心の高まりとともに、トラック業界でも脱炭素化が進んでいます。特に水素燃料を活用した大型トラックの開発が国内外で注目されています。本記事では、水素燃料トラックの開発の歴史、現在の状況、そして将来に向けた課題について見ていきましょう。
欧州では、スイスが水素トラックの導入を先導し、2020年には「Hyundai XCIENT Fuel Cell」が運行を開始しました。このトラックは、世界初の量産型燃料電池大型トラックとして、スイスを皮切りに導入されました。
また、ドイツではダイムラー・トラックが「GenH2 Truck」のプロトタイプを2021年に発表し、2024年半ばから顧客向けテストを開始、2030年後半には量産モデルの導入を目指しています。さらに、ダイムラー・トラックはボルボ・グループとの合弁事業「セルセントリック」を設立し、燃料電池システムの量産体制を強化しています。
一方、米国では、Hyundaiが「XCIENT Fuel Cell」トラックを2023年に初めて公開し、北米市場への参入を目指しています。このトラックは、スイス、ドイツ、イスラエル、韓国、ニュージーランドの5カ国で展開され、累計400万マイル以上の商用運転実績を持っています。
日本ではトヨタと日野自動車が協力し、「日野プロフィアFCV」の開発を進めています。2022年には、商業運用を想定した試験走行が開始され、2025年の市場投入を目指しています。また、国土交通省や経済産業省が水素ステーションの整備を支援しており、インフラの拡充が進められています。
さらに、大手物流企業が水素燃料トラックの導入を検討しており、環境負荷の低減に向けた取り組みが進行中です。
水素燃料の研究は1970年代から進められてきましたが、当初はコストや技術的な課題が多く、商業化には至りませんでした。しかし、2000年代に入ると燃料電池技術の進歩とともに、バスや乗用車向けの燃料電池車(FCV)の実用化が進みました。
トラック分野では、2010年代後半から各国の大手メーカーが水素燃料トラックの開発に本格的に着手。特にスイスの「H2 Energy」、ドイツの「ダイムラー」、アメリカの「ニコラ・モーター」、日本の「トヨタ」「日野自動車」などが積極的に参入し、試験運用が進められてきました。
水素燃料トラックの普及には、全国的な水素ステーションの整備が不可欠です。現在、日本国内の水素ステーションは都市部を中心に限られており、長距離輸送を行うトラックの運行にはまだ課題があります。
水素燃料電池の製造コストや水素供給コストが依然として高いため、ディーゼルトラックと比較すると経済的なハードルが高いのが現状です。水素の大量生産技術の向上や、グリーン水素(再生可能エネルギー由来の水素)の普及が鍵となります。
現在の水素燃料トラックの航続距離はディーゼルトラックに比べるとまだ短く、燃料タンクの大型化による積載量の減少も懸念されています。これらの問題を解決するために、高圧水素タンクの開発や、軽量化技術の向上が求められます。
水素燃料トラックは、脱炭素社会の実現に向けた重要な技術の一つとして期待されています。現在は実証試験段階ですが、今後の技術革新とインフラ整備により、商業化が加速する可能性があります。
日本国内でも官民一体となった取り組みが進められており、今後の発展が期待されます。環境負荷の低減と持続可能な物流を実現するために、水素燃料トラックの動向を注視していく必要があります。
岩瀬運輸機工は持続可能な物流業界をめざして、これからも将来に向けた脱炭素化に取り組んでまいります。
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参考文献
Hyundai Motor’s Delivery of XCIENT Fuel Cell Trucks in Europe
メルセデス・ベンツの水素燃料電池トラックを試験導入
https://esgjournaljapan.com/world-news/34856
「EV・FCVトラック元年」に熱気、米で導入活発化も残る課題
Hyundai、米国でXCIENT Fuel Cellトラックの市販モデル発表
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000069.000095868.html
日野自動車、ジャパントラックショー2024に出展