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Q1. まずはこちらの工場で製造されている製品について教えてください。
A1. P-1対潜哨戒機、C-2輸送機を中心に自衛隊さん向けの航空機の製造を行っております。
当工場はP-1対潜哨戒機、C-2輸送機を中心に自衛隊さん向けの航空機の製造、修理、整備を行っており、これらの機体を模擬したフライトシミュレーター、各ミッション毎の訓練装置、機体維持に必要な整備用器材も製造しています。
「カワサキ」と聞くとバイクを思い浮かべる方も多くいらっしゃるのですが、新幹線などの鉄道車両、潜水艦、航空機、ロケット、工業用ロボット、工場プラントなど、様々な重工業製品を開発・製造しています。中でも当工場は戦前から航空機製造を行い、戦後も航空機、ヘリコプター、そして各種の飛しょう体を開発・製造してきました。
TOKYO2020の開会式で展示飛行を行ったブルーインパルスの機体も、当工場で製造しているんですよ。
Q2. 岩瀬運輸機工のミッションを教えてください。
A2. フライトシミュレーターの分解・搬出、輸送、現地での搬入・組立をお願いしています。
先にお話ししたようにP-1、C-2のコックピットを模擬したフライトシミュレーターは、本体だけで縦横6メートル、重量10トンという巨大なものです。
この巨大な装置を工場で分解し、現地で組み立て、それをアンカー固定した6本のアクチュエーターの上に設置するわけですが、輸送中を含めてフライトシミュレーターに大きな衝撃を加えることは許されないため、並大抵の技術力では行えないミッションだといえます。
Q3. 岩瀬運輸機工とはいつからのお付き合いですか。?
A3. 2012年からです。
川崎重工業が採用した海外製のシミュレーター用アクチュエーターを国内で組み立てていたのが岩瀬運輸機工さんだったことがきっかけでした。
話を伺ってみると、民間機のシミュレーター設置工事、クリーンルームでの大型機器設置や衛星輸送などの経験もあるとのことで、繊細な環境や精密機器の取り扱いに長けていると感じたため、お仕事をお願いしました。
現地は自衛隊さんの基地になるので、入場するだけでも一苦労です。製品輸送の申請を一元管理でお願いできるのも、発注者としてはありがたい限りですね。
Q4. とくに印象に残るミッションはありますか?
A4. 建屋の床構造が想定外で、アンカータイプと施工方法を急遽変更しなければならなくなったことがありました。
公差0(全く誤差が許されない状態)でのアンカー施工が必要になったのですが、岩瀬運輸機工さんは「無理です」とは絶対に言わず、アンカーメーカーと何度も施工方法を検討し、模擬施工を繰り返して現地に臨み、公差0のミッションをクリアしてくれました。この件はアンカーメーカーでも伝説になっているそうです。
専門メーカーにお願いしても断られる可能性がある仕事でしたが、一緒に乗り越えてくれた岩瀬運輸機工さんと当社との関係は、もはや元請けと下請けではなく協働者です。それだけの信頼関係がなくては達成できない仕事だと私は思っています。
Q5. 岩瀬運輸機工に望むことは何ですか?
A5. これ以上望むことは・・・ないですねというと少し変ですが(笑)。
このままでいてくださいね、というのが希望です。
なかなかマニュアル化できない能力が多いと思いますが、技術と精神を途切れることなく次の世代に伝えていただいて、川崎重工業が作るシミュレータは自分たちが先陣を担当するんだという意気込みを持ち続けて欲しいです。
Q6. 最後に御社の展望とご担当者様の今後の抱負をお聞かせください。
A6. 航空宇宙産業としてのカワサキを、もっと知っていただきたいですね。
Amazon®のPrimeVideo®でP-1開発秘話が見られるようになったりと、川崎重工業では現代社会にマッチしたPRを始めています。航空宇宙産業としてのカワサキをもっと知っていただきたいですね。航空宇宙部門の展望に関して言えば、防衛装備品であることもあり多くを語ることはできないのですが、私個人の希望としてはP-1、C-2の輸出を実現させたいです。もちろん、フライトシミュレーター輸出の際は、海外経験も豊富な岩瀬運輸機工さんに協力をお願いします。
川崎重工業株式会社 杉本 康貴様 ありがとうございました。
Topics. 川崎重工業 岐阜工場
ロッキード/川崎 T-33A
1955年、ジェット練習機T-33Aのライセンス生産によって航空機製造を再開。P-2J対潜哨戒機、P-3C対潜哨戒機のライセンス製造を経て、1985年に国産ジェット練習機T-4を開発した。 川崎重工業岐阜工場では自社開発のP-1対潜哨戒機、C-2輸送機の製造のほか、三菱F-2、新明和工業US-2、ボーイング767、777、787、エアバスA321など国内外の航空機の分担製造も行っている。
川崎T-4 練習機 フライトシミュレーター
パイロットの育成に欠かせないフライトシミュレーター。写真はブルーインパルスでも使用されているT-4練習機。単座機のフライトシミュレーターは写真のようにコンパクトだが、大型機のフライトシミュレーターは幅/奥行10メートル、高さ4メートル、重さ10トンを超える。