前回は、トラック追突事故が起こる背景をお話ししましたが、今回は追突事故が多発する時の特徴や要因をご紹介いたします。
追突事故が発生した場所のそれぞれで、人身事故と死亡事故を比較した場合、死亡事故は一般道、高速道ともに同じ割合で発生しているのに比べ、人身事故の約9割は一般道で起こっています。追突時の道路の形状や車線区分の特徴を見ると、一般道に置いては人身事故、死亡事故ともに単路で発生している割合が多く、高速道ではほとんどの追突事故が走行車線で発生しています。一般道では、信号のある交差点や信号のない交差点、踏切などを含めても、事故の発生率は5割に達しません。
高速道での追突パターンは、大きく分けて3種類あります。
時間帯にも特徴があり、人身事故は日中、6時から18時にかけてが一番多く発生していますが、死亡事故は0時から朝6時の深夜帯にかけて数多く発生しています。これは、事故の要因にも深く関わっている数値です。
ドライバー自身の人的要因について、人身事故と死亡事故を比較してみると、人身事故の要因としては下記が主に挙げられます。
1位:脇見運転(約4割)
2位:だろう運転(約3割)
3位:居眠り、もしくは居眠りに近い運転(推定)(約1割)
この3つの原因が、全体の事故の約8割を占めています。
死亡事故の要因は、約9割が上記と同様ですが、それぞれの要因の割合が大きく異なっています。
1位:居眠り、もしくは居眠りに近い運転(推定)(約5割)
2位:脇見運転(約3割)
3位:だろう運転(約1割)
居眠り、もしくは居眠りに近い運転とは、前方不注意も含めており、実際に居眠りしていた場合のみではなく、雑談や携帯電話などで話をしていたり、考え事などをしながら漫然と運転していた場合も含みます。
このように「居眠り運転」「脇見運転」「だろう運転」が追突事故が起こる直接的な要因であることがわかります。注意散漫な状態や睡眠不足、疲労が溜まった状態での長時間の運転が、主な追突事故の要因になっていると言っても過言ではないでしょう。そして、直接的な要因のほかにも様々な要因が背景には隠れています。事業者、管理者はこれらの事故の要因になりうる背景を考慮し「ドライバーができることを支援する」ことが求められます。
事業主の経営環境が厳しくなると、人件費を削減するために管理者が不足したり、管理者を育成する余裕がなくなることがあります。営業、売り上げを最優先にし、安全技術への理解や管理が希薄になりがちです。すると今度は、運行管理者による不適切な管理につながります。ドライバーに負担のかかる運行スケジュールを組んだり、渋滞や事故情報の共有がおろそかになったり、ドライバーの健康や疲労の状態を確認せずに運行を割り振るといった不適切な管理状況に陥ります。日常的な安全指導や、実際の事故の内容や要因の共有を怠るなども、事故の背景要因になりえます。
こうして運行管理者による不適切な運行管理が慢性化すると、ドライバーへの負担がかかるようになります。経営を良くするために、健康状態に不安がある状態にもかかわらず、プレッシャーから健康管理よりも運行スケジュールを優先させ、睡眠不足や疲労、焦りによって注意散漫な状態で運転することになります。そして、危険を顧みないスピードで運転を行ったり車間距離が不足したり、ひいては危険な状態をしっかり把握することができず、これらがドライバーの直接的な事故の三大要因、「居眠り運転」「脇見運転」「だろう運転」につながることとなります。
トラック追突事故では、3つの直接的な要因「居眠り運転」「脇見運転」「だろう運転」があり、人身事故の8割以上、死亡事故の9割以上がこの3つの要因によって起こっています。これら直接的な要因の背景には、運行管理や安全体制に関する背景要因が存在します。「事業者」「管理者」「ドライバー」の、運送業に関わる全ての就労者が意識をして、背景要因の排除に努めることが、トラックの追突事故を減らすことにおいては不可欠です。